隠元隆琦(いんげんりゅうき、1592-1673)は、明末清初の中国から日本へ渡来した高僧であり、日本における黄檗宗の開祖として知られています。63歳という高齢で来日した隠元禅師は、禅の教えだけでなく、建築、美術、料理など多方面にわたって日本文化に大きな影響を与えました。
今回は、彼の残した名言や教えを通して、350年以上経った今でも私たちの心に響く智慧を探っていきましょう。
1. 竹密にして流水の過ぐるを妨げず、山高うして豈に白雲の飛ぶを礙えんや
Bamboo is dense but does not prevent the flow of water; how can high mountains obstruct the flight of white clouds?
竹が密集していても流水の流れを妨げることはなく、山が高くても白雲の飛行を阻むことはないという教えです。
人生の障害も、心のあり方次第で乗り越えることができる。厳しい状況でも流れるように適応すれば、どんな困難も自然に道が開けると隠元禅師は説いています。
2. 一花開五葉、結果自然成
One flower opens into five petals, and the fruit naturally forms.
一つの花が五つの花弁を開き、自然に実を結ぶという意味で、物事は自然の摂理に従って発展していくことを示しています。
急がば回れというように、無理に結果を求めるのではなく、自然の流れに身を任せることの大切さを説いています。努力は必要でも、執着しすぎないバランスが重要です。
3. 随処作主、立処皆真
Be the master wherever you are; truth exists in every place you stand.
どこにいても主体性を持ち、どんな場所でも真実が存在すると説く教えです。
どのような環境でも、あなたが真摯に向き合えば、その場所自体が修行の場となり、真理に触れることができるのです。
4. 心外無法、法外無心
Outside the mind, there is no dharma; outside the dharma, there is no mind.
心の外に法はなく、法の外に心はないという禅の根本思想です。
鏡に映る自分の顔のように、世界で起こるすべての現象は自分の心の反映であり、外部に原因を求めるのではなく、自分自身を見つめることの重要性を説いています。
5. 行亦禅、坐亦禅、語黙動静体安然
Walking is Zen, sitting is Zen; in speech or silence, in motion or stillness, the essence is at peace.
歩くことも座ることも、話すことも黙ることも、動いていても静かであっても、それ自体が禅の境地であるという教えです。
日常のすべての行動が修行であり、どんな瞬間も安らかな心で満たされることの大切さを説いています。
6. 戒定慧、不可暫離
Precepts, meditation, and wisdom should never be separated for even a moment.
戒律(戒)、瞑想(定)、そして智慧(慧)の三学は、一瞬たりとも切り離してはならないという仏教の基本的な教えです。
三脚の椅子の各脚のように、これらの要素はどれも等しく大切であり、バランスを保つことで真の精神的成長が得られます。
7. 茶禅一味
Tea and Zen have the same flavor.
茶道と禅の境地は一つであり、日常の所作の中にも禅の心が息づいているという教えです。
茶碗を持つ一つ一つの動作に宇宙の真理が込められており、日々の生活の中に深い気づきを得ることができると説かれています。
8. 本来無一物、何処惹塵埃
Originally there is not a single thing; where can dust alight?
心はもともと何も持たないため、どんな塵埃も引き寄せることはない。
澄んだ水が泥を跳ね返すように、本来の純粋な心は雑念や執着に左右されることなく、常に清らかであり続けるのです。
9. 是非憎愛、尽従心起
Judgments of right and wrong, love and hate, all arise from the mind.
善悪や愛憎の感情は、すべて自分の心から生じるものであるという教えです。
私たちが見る世界は、心のフィルターを通して捉えられているため、状況や視点を変えることで、苦しみが喜びに変わる可能性があると説いています。
10. 饑来喫飯、睡来眠
When hungry, eat; when tired, sleep.
空腹なら食べ、眠気なら寝る――自然な欲求に正直に従う生き方こそ、真の充実をもたらす。
過度な計画や複雑な思考を捨て、今この瞬間の生理的欲求に素直に応じることの大切さを説いています。
11. 一通百通、一滞百滞
If one thing flows, a hundred things flow; if one thing stagnates, a hundred things stagnate.
一つの事柄が円滑に進めば、他の多くの事柄も流れるように進む。一方、ひとつの障害があると、すべてが停滞してしまう。
日常の小さな行いが、全体の流れを左右するという教えです。しっかりとした基盤を築くことの大切さを教えてくれます。
12. 秋風掃落葉、無処不清涼
Autumn wind sweeps away fallen leaves; there is no place not cool and refreshing.
秋風が落ち葉を掃き去るように、不要なものを取り除けば、どこも清涼な空気に包まれる。
心の乱れを整えることで、自然と内面の清らかさが戻り、穏やかな気持ちで日々を過ごすことができると説いています。
13. 一塵不染方為仏、一法不舍即生死
Not tainted by a speck of dust is Buddha; not relinquishing a single dharma is the cycle of life and death.
一切の塵も付かない状態が仏の境地であり、一方で、一つの法に固執することは生と死の輪廻を招く。
執着を捨て、自然な流れに身を任せることで、真の自由と成長が得られると説いています。
14. 言中響有、響中有言
Within words there is resonance, within resonance there are words.
言葉の奥深くには、ただの文字以上の響きや意味が隠されています。
表面的な言葉だけでなく、その裏にある本質や真意に耳を傾けることの大切さを教えてくれます。
15. 莫厭底事無、底事無便是禅
Do not dislike having nothing; having nothing is precisely Zen.
「何もないこと」を嫌ってはならない。何もないことこそが、真の禅の境地である。
心を無にして、余計な執着を捨てることで、無限の可能性が広がると隠元禅師は説いています。
16. 先用行持後用照、照行円満見真仏
First practice, then reflect; when practice and reflection are perfectly harmonized, you will see the true Buddha.
まずは実践し、その後で内省する。実践と瞑想が完全に調和したとき、真の仏の姿が見えてくる。
理論だけではなく、日々の行動を通じて知識を深めることが、真の理解へと導く道であると説いています。
『隠元』の心惹かれる名言を見つけることはできましたか?
学んだ知識はさらに深めることであなた自身の軸になるかもしれません。
参考リンク: 言中響あり | 玄侑宗久公式サイト | 竹密にして流水の過ぐるを妨げず | 『禅』とは何ですか? | 髓心